現在、これまでの「カン」、「コツ」、「ケイケン」に頼ることから脱却し、多くの企業では定量的なデータを根拠にした事業運営ができるよう、業務改革に取り組まれています。データドリブンで意思決定をするには、会社の中に分散している情報を一元管理し、活用できるデータを必要な人がアクセスし取り出せることができる様に、情報基盤を整備する必要があります。今回は、データドリブン経営を実現するためのデータプラットフォームの構築ポイントと課題について触れてみたいと思います。

企業で管理されているデータのうち、75%は利用されないまま眠っている現状は前回触れました。これらの眠っているデータを活用できるようにする方法の一つとして、生成AIの導入があります。

生成AIのデータソースはインターネット上で公開されている情報です。よって、サーチャーと呼ばれる高度な情報検察の専門技術を持つエンジニアであれば、同様の答えを見つけることができるのですが、多くの人にとっては難しい作業でした。生成AIの登場によりこのような高度な技術を要する作業が誰でも簡単に行うことができるようになりました。また、RAG(Retrieval Augmented Generation)という技術を使う事で、公開された情報だけでなく、企業内の独自データベースからも関連情報を取り出し、その情報を活用して回答を生成することが可能になりました。

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では、生成AIを使えば眠っている75%のデータの活用が進むのでしょうか?このブログでは、生成AIを活用して正しくデータを取り出せる様にするために、解決しなければいけない4つの課題についてご紹介したいと思います。

 

  1. ハルシネーション

ハルシネーション(Hallucination)の単語の意味は、幻覚や錯覚です。AIの分野では、人工知能であるAIが事実とは異なるもっともらしい答えを出力する現象のことを言います。原因として「誤ったデータを学習している」、「データが古い」、「学習データに偏見やフィクションが含まれている」、「データの関連性が間違っている」などがあげられます。特に生成AIの場合、トークン化されたデータをエンコードとデコードを繰り返しベクトル化して結果を生成する為、回答の生成の過程で起こるハルシネーションを避けることができません。

データドリブンで経営を進めていこうというのに正しくない情報が提示されてしまうと判断を誤ることにつながります。正しい情報を見つけ出す方法として、デジタルスレッドを活用することが一つの解となります。デジタルスレッドとは、データとデータをデジタルの糸(スレッド)で関連付けデータを管理するPLMでよく用いられているデータ管理手法です。

デジタルスレッドを辿ることで、当該データの上流にさかのぼって原因方向に情報展開したり、下流方向に情報展開することで影響を把握するなど、デジタルスレッドを辿ることで組織の壁を越えて必用な情報を見つけることができます。

 

  1. セキュリティ

会社に眠っている75%のデータを検索できることになることは良いことですが、企業内の情報に権限の無い人がアクセスすることは避けなくてはいけません。その為には、権限管理のしっかりしたシステムの中で生成AIを活用することが必用です。

生成AIでは、RAGを使って企業のデータベースにアクセスし、データを取得します。データ取得先のシステムの権限設定が細かければ細かいほどユーザの役割に合わせ柔軟にデータを取得することができます。基幹システムであるERPやSCM、CRMなどは、それぞれの業務に応じた粒度での権限設定機能が用意されていますが、設計情報を管理するPLMは一番詳細で柔軟な権限管理が可能です。PLMではアクセス制御リスト(ACL)や、ロールベースアクセス制御(RBAC)、属性ベースアクセス制御(ABAC)、ポリシーベースアクセス制御(PBAC)などにも対応できるだけでなく、権限の設定方法も足し算だけでなく引き算での設定も可能です。十分なセキュリティが確保できていない情報は一度PLMで管理して、PLMの権限制御の元生成AIと連動させるのが良いと考えます。

 

  1. データクレンジング

実際の現場では、同じモノを指しているにも関わらず部門や業務に応じて異なる呼称で呼ばれることがあります。例えば同じ品目の部品を指す場合でも、企画段階では製品化が未定という事もあり、一時的な番号としての仮品番が付与されます。その後、製品化が確定した段階で正式品番が付与されます。設計部門で採番された品番も工場に行くと色や材質がコードを見ただけですぐに判別できる様に正式品番に色コードや材料コードが付加された番号で運用されることや、倉庫ではロケーションなどの情報が付与された番号で管理されたりもします。製品を顧客に販売する場面では商品番号が付与され、最終的に製品が顧客に届けられる際にはシリアル番号が付与されます。このように同じモノを指しているのも関わらず業務に合わせて異なる呼び方をするという事はよくある話ではあります。

また日本には、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字、記号だけでなく、全角と半角という文字が存在し、これらはコンピュータから見ると全て別のコード体系で管理されます。

この問題を解決するために企業では長年データクレンジングの作業が行われてきたものの上手く整理できた事例をあまり聞いたことはありませんでしたが、最近ではAIを使った動的ナレッジグラフをデータクレンジングに活用することで、容易にデータをまとめることが可能になってきました。

ナレッジグラフとは、データをノードとエッジの集合体として管理し、概念的な項目にデータをインスタンスとして関連付けて管理する手法です。ナレッジグラフとAIを掛け合わせることで動的ナレッジグラフを構築することができます。動的ナレッジグラフはAIを用いて意味の近しいノードの集合を作るテクノロジーで、動的ナレッジグラフを作ることで文字列が異なっていても同じ意味を持つものを見つけることが可能になります。

皆さんもGoogleなどの検索エンジンを使って検索した場合、英文字でローマ字入力したり、タイプミスしたりしても正しく日本語を使った場合と同じ内容が検索できることを経験したことがあるかと思います。これはナレッジグラフを使った一例で、動的ナレッジグラフを使う事でクレンジング作業を大幅に軽減することが可能となります。

 

  1. リテラシー

リテラシーとは特定の仕組みや情報を活用する能力の事を言いますが、ここでの話はITのリテラシーに限定して進めたいと思います。生成AIにより情報を見つけやすくなることは良いことですが、ハルシネーションなど事実とは異なる情報が提供されたり、生成AIで壁打ちなどをしながら情報を探し出す場合、どれが必用な情報なのかが見えなくなってきます。データドリブンで事業運営を進めるにあたっては、何が正しい情報なのか?どれが自分に必用な情報なのか?を判断することができる、情報リテラシーの強化も求められます。

データドリブンで意思決定をすることは日々の改善には大きく役に立ちますが、経営判断はデジタルな情報だけでは判断できない事も多々あります。その為、仕事で培った経験値とデータによる根拠を組み合わせる情報活用リテラシーの向上が、事業運営には求められてきます。

 

今回はデータドリブン経営を支える情報プラットフォームの課題について触れてみました。AIが実用段階に入り業務に貢献できるレベルになってきた今日、データドリブンで意思決定をするためには企業内にある様々なデータソースの有効活用が求められます。データドリブンで業務を進める情報インフラを構築するには、自社の状況にあった様々な課題の解決策と連携したトータルソリューションの青写真の絵を描くところからスタートすることをお勧めします。