Seaspan Shipyards はカナダ国家造船戦略において極めて重要な企業であり、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーおよびビクトリアに合わせて3つの工場を抱えています。カナダ沿岸警備隊やカナダ海軍を支えながら、多様な船舶のオーバーホールやメンテナンスでも世界的に名を馳せています。同社は製品ライフサイクル管理(PLM)のアプローチの合理化を図り、造船業で求められる変化のスピードに対応するため、Aras と連携しました。
「Aras は、社内プロセスの変更や会社組織の成熟に合わせてカスタマイズできます。過去に導入したプロセスに縛られることはありません。実質的にシステム全体を壊すことなく、古いプロセスから脱却して新しいプロセスを再導入できるのです。プロセスの変化や成熟に合わせてカスタマイズ可能で、しかも柔軟であることが極めて役に立っています。」
Seaspan デジタル造船所ディレクター Chris Phillips(クリス・フィリップス)氏
課題
Seaspan は、カナダ海軍およびカナダ沿岸警備隊の船隊を強化・刷新するために2011年に開始された「カナダ国家造船戦略」において、極めて重要な役割を担っています。このイニシアチブは、第二次世界大戦以降、カナダで最大規模の調達プロジェクトです。
イニシアチブの一環として、カナダ政府は Seaspan をカナダ西海岸における造船の中核拠点に指定しました。それに伴う需要の増加に対応し、世界に通用する造船会社となるという目標を実現するために、Seaspan は政府プロジェクトで使用する3つの造船施設を刷新しました。この刷新により、バンクーバーの造船所は建造、修理、改造に、バンクーバーの乾ドックは修理と改造に、ビクトリアの造船所はオーバーホールとメンテナンスのサービスに使用することになりました。
同時に同社は、他社に遅れを取らないよう、製品ライフサイクル管理戦略を改善する必要性に気付きました。造船プロジェクトは絶え間なく変化するため、それに対応できる PLM 戦略と PLM プラットフォームが不可欠なのです。スプレッドシートのみを使って複雑なデータを管理していたときは、規模と、目まぐるしく変わる優先事項が課題となっていました。それを刷新する時が来たと言えます。
PLM への要件
Seaspan は、PLM 戦略を刷新するために2つの柱からなるビジョンを掲げました。まず、統合データソースの確立に着手しました。それは、製品に関するあらゆる情報を包括的に可視化できる、ワンストップのソリューションです。
また同社は、ダイナミックで変化し続ける造船業界において、効果的な変更管理が特に重要であることも認識していました。同社のビジョンでは、2D および 3D のモデリングスイート、MRP システムおよび ERP システムを含む PLM エコシステムを活用し、プロジェクトのライフサイクル全体を通して、変更の影響を隅々まで把握することを目指しました。
SeaspanはArasのパートナーであるJavelin Technologiesと協力しています。Chrisは、ビジョンの実現と目標の達成に向けた効果、効率、および実現方法を向上させるために、業界のトレンドやその他の方法を特定する上でパートナーシップの関係が重要であることを強調しています。
Seaspan は PLM のビジョンの中で効果的な変更管理に重点を置きました。つまり、変更の影響を特定し、部品、ドキュメント、コスト、スケジュールといった要素間の関係を管理できるようになることを目指したのです。
カナダでは熟練の造船技師が不足していることから、グローバルな労働力が Seaspan の頼りです。そのため、チーム全員が正確な、最新の情報にアクセスできるようにして均質性を確保することや、追加される変更、遅延、コストを確認できるようにすることも重要でした。
同社では、データストアやプロセスの複雑性が増すにつれて、まとまりを欠いたアプローチには持続可能性がないことを見通していました。そこで、使いやすく、組織固有のニーズに適応できる PLM プラットフォームの検討を始めました。
「データシートや設計仕様書などの重要な設計文書を管理できる、堅牢な文書管理レポジトリを求めていました。世界に通用する造船会社になるとい目標を叶えるには、より統制のとれた方法で PLM のエコシステムを活用する必要があることを、Seaspan は見抜いていました。」
Seaspan デジタル造船担当ディレクター Chris Phillips(クリス・フィリップス)氏
- 正確な最新情報が得られる統合データソース
- 効果的な変更管理
- さまざまなテクノロジーやソフトウェアを統合できる機能
- ユーザーフレンドリー
- 適応性
Aras Innovator による成功
Seaspan は Aras を「ワンストップショップ」として、かつ中心的なデータリポジトリとして選択しました。2013年の Aras 導入当初はドキュメント管理に重点が置かれ、物理的なドキュメントからデジタルフォーマットへの転換が図られました。クリス・フィリップス氏は2014年から2017年のこの期間を学習曲線と捉えています。
いくつか課題はあったものの、わずか3か月で初期導入が完了し、その後2回の大幅なアップグレードが実施されました。2018年までに、Seaspan は PLM の重点をドキュメントから製品データに移し、Aras のユーザーを750人から1,100人に増やしました。この移行は、PLM エコシステムを活用して管理性を改善し、世界に通用する造船企業の地位を獲得することを目的としていました。
また、Seaspan は PLM エコシステムを管理するために、運営委員会と専任のスタッフからなる正式な PLM プログラムの設置も行いました。そしてプログラムのメンバーにより、組織の目標に沿った PLM ビジョンとロードマップが策定されました。
顧客との契約を管理するカスタムの要件管理モジュールも導入し、変更要求と紐づけられてこれらの情報がすべて Aras でやり取りできるようにしました。
成果:Aras Innovator により、将来へに備えも万全に
Seaspan における Aras Innovator は、すべての製品情報を包括的に可視化する、均質なデータソースとして活躍しています。船の建造には2~3年かかり、その間に技術の進歩があれば、最終的な造船方法は劇的に変わる可能性させあります。Aras は、造船業で求められるそのような規模の変更管理を、はるかに現実的なものにしました。
Seaspan は BOM を Excel から Aras に移行し、マスターの部品カタログと、変更の影響分析情報を Arasに集約しました。クリス・フィリップス氏の言葉を借りると、このプロジェクトは「変革」に当たります。
次のイニシアチブは、2D および3D の CAD ソフトウェアと Aras の間に双方向のインターフェイスを構築することでした。これにより、コンフィギュレーションを Aras で直接管理できるようになり、変更の影響を可視化できるようになりました。このトレーサビリティにより、3D モデルから直接重要なデータにアクセスできるなど、船舶の管理が効率化されたのです。
Seaspan のビクトリア工場では、カナダ沿岸警備隊とカナダ海軍向けに修理とメンテナンスも提供しています。これらのサービスの要件も進化していますが、それに合わせて、Aras のメンテナンス管理機能も進化し続けています。
さらに、Seaspan は MRP システムを Aras と統合し、部品の発注とステータスの追跡を効率化することも計画しています。これにより、製品情報の単一のソースを確立するというビジョンに近づくことができます。
「Aras を活用することで、問題の報告からエンジニアリングの変更要求まで、変更を管理可能になりました。Aras の各種ツールを用いて、労務管理やライフサイクル管理を行っています。変更管理がとても簡単になりました。」
Shipyards システムエンジニアリングおよびシステムプランニング担当スーパーバイザー Maureen Katarama(モーリーン・カタラマ)氏