お客様事例

NuScale が PLM を用いた初の原子力発電所の設計と管理で Aras と連携

 Customer Story – NuScale
規模
従業員300人以上
業界
EPC

課題

ドキュメントベースの体系では、安全、規制、品質関連の厳しい要件に対応することが困難であった

ソリューション

  • Aras Innovator の PLM ソリューションにより、デジタルスレッドの基幹を構築
  • 同一の設計から派生した複数の改訂バージョンを管理し、要件の適合に対応
  • 引き渡し時にすべてのエンジニアリング情報が収められたデジタルツインを提供

Aras Innovator 導入後の効果

  • 容易に部品レベルまでの要件を追跡
  • 複数のソフトウェアスイート、ワークフローエンジン、データベースを駆使しなければならない状況を最小限に抑え、中央データリポジトリを構築
  • ライセンス、安全性、および品質に関する要件を保ちながら、自動化を導入して紙ベースの手続きを削減

NuScale は当初、独自の小型モジュール炉の設計において、従来の原子力発電所と同様のドキュメントベースの分散型プロセスにより、無数の安全、規制、品質要件を満たす計画でした。しかし、それよりも優れた方法があることを見出した同社は Aras と連携し、要件の適合、コストの削減、効率性の向上を支援する、デジタルスレッドを活用した製品ライフサイクル管理(PLM)システムを導入しました。

「Aras を導入し、事業とともに進化させることができるプラットフォームを確立したことで、デジタルスレッドのメリットをより早く、低コストで実現できると確信しています。Aras は特徴的なアーキテクチャーを備え、社内や業界のプロセスの変化やビジネス要件の変化に容易に適応させることができます。カスタマイズして使うことは、単にそれが可能というだけでなく、奨励されています。ソフトウェアに合わせて自分たちのプロセスを調整するのではなく、自分たちのニーズに合わせたソリューションを手に入れることができます。」

NuScale コーポレート・サービス担当 ディレクター ニール・オリヴィエ(Neil Olivier)氏

課題

2007年に設立された NuScale Power は、小型モジュール炉(SMR)の技術を世界のエネルギー市場に投入することを目指しています。同社は、信頼性に優れた、カーボンフリーの豊富な原子力エネルギーを供給するため、SMR 方式の NuScale Power Module(NPM)の設計と商用化を進めています。最初の発電所は、米国で2030年に運転を開始する予定です。
同社の SMR は従来の原子力発電所よりもはるかにシンプルで安全な設計であるものの、満たさなければならない規制要件は従来と変わりません。米国内に設置する原子力発電所には60,000を超える安全、規制、品質関連の要件があり、並大抵の作業ではないのです。

同社は当初、従来の原子力発電所と同様の、ドキュメントベースの分散型プロセスで各要件を満たす計画でした。しかし、それは非常に困難であることが分かりました。設計要件は、法令遵守表明書、倫理要件、境界パラメータ、顧客要件など、さまざまな形態で現れます。設計の変更も、連邦政府、顧客、業界イニシアチブなど、さまざまなポイントやタイミングで生じる可能性があります。

初期の NuScale では、設計管理やコンフィギュレーション管理といったエンジニアリングプロセス周辺のさまざまな情報を取りまとめるのに、複数のデータベースを用いていました。また、ドキュメント管理にはシーメンスの Teamcenter を使用していました。

しかし、ドキュメントベースの体系に依存していたことで、物理的な設計情報の連携が大きな課題となっていました。同社は製品ライフサイクル管理のための、もっと新しい、効率的な方法を探りました。

PLM の要件

単一の独立した施設として設計される従来の原子力発電所とは異なり、NuScale の発電所はオフサイトの工場で製造される個々の発電モジュールを使って組み立てられた後、発電所の設置場所に運ばれます。同社が目標としたのは、航空機メーカーが異なるモデルを取り扱うのと同じように、要件やバリアントをすべて1か所で管理するという設計変更のアプローチです。

同社は PLM 導入の実現可能性を探るための調査を実施しました。その結果、既存のドキュメント管理システムを廃止し、すべてのデータを格納してデジタルスレッドを確立できるような PLM システムを導入することが、最終的な推奨事項の1つに挙げられました。

デジタルスレッドを活用できる PLM プラットフォームを導入すると、同一の設計から派生した複数の改訂バージョン全体で、要件と仕様を維持しながらコンフィギュレーションを管理できます。

  • すべての設計要件を1か所で管理
  • すべての品質記録と品質不適合記録を格納
  • CAD および部品表(BOM)の管理
  • シミュレーション管理
  • メンテナンス管理
  • バーチャル設計レビュー
  • あらゆる工学設計変更の管理
  • エンタープライズ変更管理
  • あらゆる技術系タスクの自動化
  • 拡大するグローバルなサプライチェーンに対応するための拡張性
  • 最大12の商用およびカスタムビルドのアプリケーションの置き換え

Aras Innovator による成功

NuScale の発電所は、PLM を単一情報源の基幹とし、それを設計・管理に活用した初めての原子力発電所です。Aras Innovator が柔軟性と拡張性を備え、ツール非依存であり、アップグレードが容易であったことから、同社は最終的に Aras を PLM パートナーに選びました。

NuScale は Aras Innovator を利用してシステムエンジニアリングの原則を PLM のアプローチに適用し、明確な追跡可能性を確保しながら、BOM のあらゆる部分に要件を繁栄させました。これにより、設計変更が発生しても、常に顧客が設計のコンフィギュレーション管理を保つことが可能になりました。

「これこそが、目指していたゴールです。複雑極まりない機械的な発電所ですが、いつでも部品レベルで要件を追跡できます。そして、例えば『このポンプは30日間使う予定だが、試験したところ、27日間しか持たないと予想される。そのため運用に適さず、修理が必要だ』といった判断ができます。このようなことを非常に明確かつ簡潔に判断できるのです。」

NuScale コーポレート・サービス担当 ディレクター ニール・オリヴィエ(Neil Olivier)氏

NuScale は発電所の設計とエンジニアリング、とりわけモジュールと原子炉自体の設計とエンジニアリングにおいて、要件ベースのアプローチも取り入れています。Aras Innovator の導入によって複数のソフトウェアスイート、ワークフローエンジン、データベースを駆使しなければならない状況を最小限に抑え、データと情報の関連付けが可能な中央データリポジトリを構築できました。このような関連付けは、分散したデータソリューションやソフトウェアソリューションでは実現不可能でした。同社は現在、再現可能性のあるシンプルなワークフロー設計を用いて、全部門にわたって従業員の効率性の継続的な向上を図っています。
同社はまた、Aras Innovator で提供される自動化機能を最大限に活用することで、厳格なプロセス要件および品質要件に則りながら、紙ベースへの依存を最小限に抑え、最大限に自動化しています。

NuScale の顧客である発電所の所有者や原子力事業者に、関連するすべての設計工学情報が収められたデジタルツインを提供することもできます。デジタルツインは、各部品の設計要件の追跡を可能にします。Aras PLM では、発電所の所有者や原子力事業者が運転許可や安全性に関する要件に従いながら、発電所のライフサイクル全体を通じて一貫したコンフィギュレーション管理を行うことができます。

結果:高効率の未来のエネルギーを実現する PLM プラットフォーム

Aras Innovator 上でデジタルスレッドを構築することで、NuScale は「ワンストップショップ」の PLM の基幹を確立しました。それにより、厳格な規制が適用される、複雑性を極めながらも画期的な小型モジュール炉の開発を進めることが可能になりました。

Aras Innovator により、例えば最も包括的な耐久要件から、送電網が停止した場合に個々のポンプが30日間高温に耐えなければならないといった詳細に至るまで、すべてを管理できます。このようなレベルでの要件管理は、膨大な情報を必要とするため、従来の紙ベースの体系では不可能でした。

Aras のユニークなアーキテクチャーにより、システムのアップグレードは、NuScale によってシステムに組み込まれたカスタム機能を阻害することなく実施できます。最も重要なのは、NuScale にとって追加費用なしでシステムをアップグレードできることが約束されている点です。同社が使用していたレガシー PLM ソリューションでは、モジュール機能が限定的でありながら、過去の毎回のアップグレードに平均10万ドルの費用がかかっていました。この点で、Aras は長期的な所有コストの大幅な削減にも寄与しています。