1990年代半ばから、ドレーゲルの医療部門と安全部門は、製品データ管理にオラクルの Agile e6を採用していましたが、各部門が異なるインスタンスを使用していました。デジタルトランスフォーメーションを推進する中、同社はセキュリティやスケーラビリティ、パフォーマンスの向上、および IT コストの削減を目的として、オペレーションを Aras Innovator(およびクラウド)に移行しました。
「エンドユーザーがクラウドで作業を実行できるようになり、オーサリングシステムの利便性が格段に向上しました。メカニカルデザイナーは、CAD システムを起動すると、Citrix 経由でクラウドサーバーに接続します。CAD データのみがストリーミングで表示されるため、データ転送量やデータセキュリティ、ノウハウ保護の面で非常に大きなメリットがあります。また、データの複製も不要です」
ドレーゲル 製品ライフサイクル管理(IT)コンピテンスセンター長 Hanns Schulz-Mirbach(ハンス・シュルツ=ミルバッハ)博士
課題
1889年にドイツのリューベックで設立されたドレーゲル(Drägerwerk AG & Co. KGaA)は、今やグローバル規模で事業を展開しています。同社は医療製品や安全製品を製造しており、主な製品として病院用の麻酔ワークステーションや人工呼吸器、呼吸用保護具、火災時や鉱山での救助活動用のガス検知器などが挙げられます。
1990年代半ばから、ドレーゲルの医療部門と安全部門は、製品データ管理にオラクルの Agile e6を採用していましたが、各部門が異なる接続とオーサリングシステムを利用して、別々のインスタンスを使用していました。たとえば、医療技術部門の機械設計では主に SolidWorks を CAD として使用していましたが、安全技術部門は PTC Creo を使用していました。さらに両部門では、AutoCAD、Mentor Allegro、E-Plan などの ECAD システムや、さまざまなソフトウェア開発ツールも使用されていました。そのため、オペレーションが不必要に複雑化していました。
このモデルは一時的にはうまくいっていましたが、次第に、オラクルの製品では技術的な要件を満たせないことが判明しました。たとえば、自社でインフラを用意しなければならず、多額のコストがかかり、海外拠点との連携やデータ複製の面で問題が生じていました。また、長年にわたりカスタマイズを行ってきた結果、同社で使用していたオラクルの e6システムの柔軟性は低下し、アップデートに多大な費用と時間がかかるようになっていました。
同社は、セキュリティやスケーラビリティの強化、パフォーマンスの向上、および IT コストの削減のために、新しいソリューションが必要であると考えていました。
PLM 要件
ドレーゲルは、両部門で PLM プラットフォームを一本化することを決定しました。同社にとって、スケーラビリティとカスタマイズ性は極めて重要でした。同社は、他のアプリケーションと容易に統合でき、高額なアップデートを必要とすることなく、顧客独自のプロセスに合わせた設定が可能な PLM プラットフォームを求めていました。
また、データストレージをより適切に管理するために、クラウドへの移行も決定しました。同社は軍事セクター向けの安全関連製品も製造しており、法律上、製品データは供給先の国から出られないため、クラウドへの移行は必要不可欠であったと言えます。
- 医療部門と安全部門の両方のニーズを満たす統合型 PLM プラットフォーム
- CAx(コンピュータ支援ツール)を複数搭載
- 追加コストや長いリードタイムをかけずにカスタマイズ可能
- 国ごとの規制に対応するデータストレージの管理
Aras Innovator による成功
ドレーゲルは、デジタルトランスフォーメーションへの歩みを進める中、発展する技術要件に対応するために Aras Innovator を選択しました。他のアプリケーションとのインテグレーションが可能であり、アップグレードが容易であるという点などがその理由です。Aras によるアップグレードはサブスクリプションのコストで賄われ、カスタマイズの量にかかわらず保証されています。
ドレーゲルは、Aras Innovator およびクラウドへの移行を段階的に進めました。まず、オラクルの Agile e6プラットフォームから既存の機能を移行しました。
次に、Aras Innovator を使用して、医療技術製品の承認に不可欠な電子設計履歴ファイル(EDHF)の生成に取り組みました。以前は紙ベースで実行されていたこの生成プロセスは、今は Aras Innovator で実行され、監査証明付きの記録として保存されるようになりました。
EDHF プロセスはわずか6ヶ月で本稼働し、ユーザーは早速、 Aras Innovator を使用してすべての新規プロジェクトの記録を作成しました。作成にかかる時間の大幅短縮により、プロジェクトマネージャーはプロジェクトのステータスや不足している成果物の概要をより確実に把握できるようになりました。さらに同社は、紙のアーカイブをスキャンしてプラットフォームに移行し、すべてのドキュメントへの電子的なアクセスを可能にする予定です。
結果:医療部門および安全部門のシステムの統一
Aras のソリューションに切り替えたことで、インフラを維持し、2つのシステムを運用する必要がなくなったため、IT コストが大幅に削減されました。すべての開発関連データを一本化されたシステムで管理することで、医療や安全に関する技術開発に使用するデータの同期も容易になり、余分なコストが削減されました。