製品は業界を問わず、より高度化し、コネクテッド化され、ソフトウェア主導へと進化しています。かつては主に機械部品で構成されていた製品も、現在ではハードウェア、ソフトウェア、クラウドプラットフォーム、データ、AI機能を含むようになりました。その結果、企業はスピード、品質、コンプライアンスを維持しながら、分野横断、製品世代、ライフサイクル全体にわたる複雑性の増大に対応する必要があります。
3Shapeは、この課題を誰よりも深く理解しています。同社では現在、ハードウェアエンジニアの約4倍にあたるソフトウェアエンジニアを擁しており、機器メーカーからコネクテッドなデジタルデンティストリーソリューションプロバイダーへと変革を遂げたことを物語っています。
3Shapeについて
エンジニアのTais Clausen氏とビジネス専攻のNikolaj Deichmann氏は、デンマーク・コペンハーゲンで3Shapeを設立しました。大学の卒業研究プロジェクトとして始まった同社は、現在では世界有数のデジタルデンティストリー企業へと成長し、100か国以上の顧客にサービスを提供するとともに、29か国に従業員を擁しています。製品ポートフォリオには、受賞歴のあるTRIOS口腔内スキャナーファミリー、ラボ用スキャナー、CAD/CAMソフトウェア、クラウドベースのワークフロープラットフォーム、AI支援診断ツールが含まれています。これらの中核技術は、治療プロセス全体を通じて歯科医院、歯科技工所、パートナー間のコミュニケーションとコラボレーションを支えています。
100か国以上で事業を展開し、厳格に規制された医療機器業界で事業を行う3Shapeは、迅速なイノベーションと、グローバルな製品ポートフォリオ全体における精度、品質、コンプライアンスの確保を両立しています。現在、同社は650件を超える特許を保有しており、2024年だけでも2,660万人以上の患者が3Shapeの機器によるスキャンを受けました。
課題
3Shapeは大きな変革を遂げてきました。同社の製品はますます高度化・スマート化し、ソフトウェアが重要な役割を担うようになっています。製品はもはや単体の機械装置ではなく、インテリジェントで相互接続されたシステムへと進化しています。一方で、新しい製品バリエーションやサービスが継続的に投入される一方、市場では複数世代の既存製品も引き続き稼働しています。
多くの人は私たちをスキャナーメーカーだと考えています。しかし実際には、私たちはソフトウェア企業へと変わりました。
3Shape 研究開発部 メカニカル・電気エンジニアリング担当ディレクター Morten Falk Reventlow氏
3Shapeでは、マトリックス組織のもとでコンカレントエンジニアリングを採用しています。各専門分野のエンジニアリング能力は中央で管理され、各プロジェクトは複数の分野からリソースを集めて遂行されます。生産は主に組立工程で構成され、多くの部品はサプライヤーから調達されますが、製造部門は開発プロセス全体を通じて関与しています。
こうした管理をさらに難しくしているのが、3Shapeが世界でも最も規制の厳しい業界の一つで事業を展開しているという事実です。同社の製品は、欧州、米国、中国をはじめとする各国・地域の医療機器規制の対象となっています。これらの規制では、厳格なトレーサビリティ、変更管理、そして製品ライフサイクル全体を通じてコンプライアンスを証明できることが求められます。
医療機器業界において「管理」とは、自分たちが行っていることを証明できるエビデンスを持つことです。
Morten Falk Reventlow氏
製品ポートフォリオと市場で稼働する製品数が拡大するにつれ、従来のプロセスでは対応が難しくなりました。製造部門は、小さな工程変更であってもエンジニアリング部門への依存度が高く、その結果、エンジニアは新製品の開発よりも、日常的な問い合わせへの対応、リビジョンの検証、生産支援に多くの時間を費やすようになっていました。同時に、市場で稼働する製品世代の数も増え続けていました。システムが分断されていたため、複数世代の製品にまたがる設計データ、生産情報、規制文書の管理はますます困難になっていました。小規模な組織では十分に機能していた仕組みが、将来の成長と拡張性を妨げる要因となり始めていたのです。その結果、エンジニアリング、生産、ライフサイクル情報を、ガバナンスを備えた拡張性の高い環境で統合することは、もはや選択肢ではなく必須となりました。
PLM要件
製品データの管理は課題の一部に過ぎませんでした。3Shapeが必要としていたのは、明確な責任範囲を確立し、完全なトレーサビリティを維持できるプラットフォームでした。エンジニアリング部門が製品を定義し、製造部門は管理された範囲内でプロセスを改善するという役割分担を実現する必要がありました。また、このソリューションは厳格な医療機器規制への対応を支援するとともに、品質管理、サプライチェーン、製品管理へと将来的に拡張できる基盤となることも求められていました。
大規模な変革を目指すのではなく、3Shapeは意図的に最小限の実用的なPLM(Minimum Viable PLM)導入からスタートしました。当初の目標は明確でした。それは、業界のベストプラクティスに基づき、研究開発(R&D)と生産を管理されたスケーラブルな形でつなぐことでした。
私たちにとって最小限の実用的なソリューションとは、研究開発と生産をつなぐことでした。
Morten Falk Reventlow氏
同様に重要だったのは、プラットフォーム自体が将来にわたって進化できることでした。柔軟性と長期的な適応力が重要な選定基準となり、その結果、Aras Innovatorは3Shapeのより広範なデジタルスレッド構想を支える基盤として採用されました。
Aras Innovatorによる成果
3Shapeは、新たな主要製品プログラムの一環としてAras Innovatorを導入しました。既存製品は従来システムで管理を続ける一方、新規開発は新しい環境で開始されました。プラットフォームの成熟に伴い、より多くの製品や部品がAras Innovatorへ移行しました。当初、エンジニアは新しいシステムの習得に不安を抱いていましたが、予想以上に早く受け入れられました。その理由は明確でした。長年抱えていた多くの課題が解消されたからです。正しいリビジョンを見つけることが容易になり、製品情報へのアクセス性も向上しました。エンジニアは文書を探す時間を減らし、製品開発そのものにより多くの時間を充てられるようになりました。
現在、Arasはエンジニアリングと製造を結び付け、具体的な業務上の効果をもたらしています。最も大きな変化の一つは、製造部門の自律性が向上したことです。以前は、小規模な工程変更であってもエンジニアリング部門の関与が必要でした。しかし現在では、製造チームは製品要件や品質基準への適合を維持しながら、自ら工程改善を実施できるようになっています。これらの管理されたプロセスにより、製造チームはより大きな責任と自律性を得ています。Morten Falk Reventlow氏は、新しい協業のあり方を次のように表現しています。
私たちがレシピを作り、彼らがケーキを焼くのです。
Morten Falk Reventlow氏
Aras Innovatorは、組織全体の業務上の摩擦を軽減しました。エンジニアは本来の業務である製品開発に集中できるようになり、製造チームは管理された範囲内でプロセスを実行する責任をより多く担うようになりました。その結果、エンジニアリング部門への依存が減少し、製造部門はより自律的かつ効率的に業務を遂行できるようになりました。
エンジニアは新しいスキャナーを開発するために出社するのであって、一日中ドキュメント管理システムに向き合うためではありません。
Morten Falk Reventlow氏
導入成果
約18か月で、Aras Innovatorは日常業務の一部となり、エンジニアリング部門と製造部門の双方で、製品ライフサイクル情報を管理する主要な環境として広く活用されるようになりました。現在では約200名のユーザーがAras Innovatorを利用しており、そのうち約50名はエンジニアリング部門のヘビーユーザーです。
このプラットフォームの成功を示す明確な指標の一つは、以前は製造部門からエンジニアリング部門へ数多く寄せられていた細かなプロセス関連の問い合わせが大幅に減少したことです。製造チームは多くの課題を自ら解決できるようになり、エンジニアリングチームはより多くの時間をイノベーションに費やせるようになりました。
業務改善そのものも大きな成果でしたが、最も重要な成果はエンジニアリングと製造の枠を超えたところにあります。3Shapeは将来のデジタルスレッドに向けた基盤を構築しました。製品データはもはや、分断されたスプレッドシート、レガシーシステム、個別の業務プロセスで管理されるものではありません。Arasは、製品世代、エンジニアリング分野、ライフサイクル全体にわたって製品情報を管理するための共通基盤を提供しています。この基盤は、製品情報、プロセス、ライフサイクルデータを組織全体で結び付ける、より広範なデジタルスレッド戦略の土台となっています。
組織のあらゆる部門でArasプラットフォームが活用されるようになることを期待しています。
Morten Falk Reventlow氏
今後の展望
現在の導入はゴールではなく、出発点です。3Shapeでは、品質マネジメントシステム(QMS)、サプライチェーン管理、エンタープライズリソースプランニング(ERP)システムへと製品情報戦略を段階的に拡張する中で、データの所有権に関する重要性がますます高まっています。どのシステムが特定の情報の信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)となるのか。デジタル環境が進化する中で、PLMとERPはどのように同期を維持するのか。これらは現在、3Shapeで積極的に議論されているテーマです。
私たちは常に自問しています。「信頼できる唯一の情報源はどこにあるのか」と。
Morten Falk Reventlow氏
同時に、3Shapeは新たな人工知能(AI)技術に大きな可能性を見出しています。同社はAras InnovatorEdgeの進展に大きな期待を寄せており、AIによってArasに蓄積された製品情報やライフサイクル情報からさらなる価値を引き出し、ナレッジ検索、データ探索、意思決定支援を向上できると考えています。
私たちは、AI機能によってArasに蓄積されたデータからどのような価値が引き出されるのかを非常に楽しみにしています。
Morten Falk Reventlow氏
さらにその先には、企業の枠を超えたビジョンがあります。3Shapeは、現場で稼働する医療機器から得られる実運用データを製品開発へフィードバックすることで、製品開発プロセスと実機をつなぐクローズドループの実現を目指しています。これにより、より迅速で的確な製品開発の意思決定が可能になります。
私たちは、医療機器に関するデータをPLM上で管理し、ガバナンスを確保できるシステムを実現したいと考えています。
Morten Falk Reventlow氏
