複雑な製品を開発する全ての企業が直面する共通の課題、それは文書管理(ドキュメント管理)です。設計、製造、保守の各段階では、それぞれのツールやプロセスに特化した文書やデータベースに依存しており、テキスト、スプレッドシート、CADモデル、製造計画書など、貴重な製品データが分断されています。これらのバラバラな文書とデータソースには相互運用性がないため、さまざまな問題が発生します。文書間で整合性が取れていないことも多く、精度や品質にも大きなばらつきが見られます。さらに、複数のソースからデータを関連付けるには膨大な手作業が必要で、ミスが発生しやすく、使用可能な正確な知見が得られない可能性もあります。

しかし、現代のビジネスにおいて、このようなデータの分断は許容できません。文書管理システムが求められる理由として、増大する顧客要求、複雑化するサプライチェーン、絶えず進化するコンプライアンス要件があります。企業はデータの不整合や手作業による煩わしさなく、製品ライフサイクル全体にわたって迅速に変更を実施できる能力が必要なのです。

 

文書管理のメリットを最大限に活用するには、個別の静的な文書形式を使用する代わりに、現代の企業はデータ中心のアプローチへと移行する必要があります。つまり、全てのデータとその関連性を一元的な場所で、文脈を保ちながら管理することです。このような文書管理システムのメリットにより、製品の完全なトレーサビリティが実現し、組織全体にわたるコラボレーション、イノベーション、スケーラビリティ、構成管理、変更管理、そしてコンプライアンスのプロセスをより効果的に実施することが可能になります。

文書中心とデータ中心の違い

従来のPLM(製品ライフサイクル管理)を考えると、真っ先に思い浮かぶのが効果的な文書管理かもしれません。しかし、今日の急速に変化する製造環境におけるライフサイクル管理を効果的に行うためのカギは、静的な文書からオープンAPIを備えた構造化データモデルへと移行することです。なぜ文書から脱却することが現代の企業にとって重要なのか、文書中心のアプローチとデータ中心のアプローチの主な違いを見てみましょう。

文書中心のアプローチ

文書中心のアプローチでは、情報は個別の、主に静的な文書に保存・管理されます。これらの文書は、テキストファイル、PDF、Word文書、フラットな図形文書、スプレッドシートなどの形式で独立して保存されています。これらの文書内のデータは、多くの場合、構造化されていないか、半構造化されているため、特定の情報を見つけたり、異なる文書間のデータを比較したり、文書間のデータの依存関係を伝えたりすることが困難です。

文書内に保存された製品データを使用するために、ユーザーは文書全体を取り出し、必要な特定の情報を探し出さなければなりません。このプロセスは時間がかかり、非効率で、エラーが発生しやすく、文脈も失われてしまいます。

また、文書中心のアプローチは、チーム間のコラボレーションを困難にします。多くの場合、チームはメールやチャットを通じて手作業で情報を共有せざるを得ず、貴重な製品データが組織全体に散在することになります。さらに、これらの文書の多くは静的であるため、最新の変更が反映されず、不正確な情報が永続化されてしまいます。

このアプローチはPLMの初期段階では機能していたかもしれませんが、今日の文書中心のアプローチにおける一般的な製品ライフサイクルの複雑さは、文書の散在、データの不整合、チーム間の連携不足をさらに助長することになります。

データ中心のアプローチ

一方、データ中心のアプローチでは、モデルとその要素間の完全にトレース可能な構造化データモデルを用いて、製品のライフサイクルの文脈の中で情報を一元的に保存・管理することに重点を置いています。サプライヤー記録、在庫、財務情報、部品、センサーデータなどのデータは独立した要素として存在し、チームメンバーは容易に検索や操作を行うことができます。このアプローチは通常、オープンAPIを備えた関係データベースを活用します。

この戦略により、チームはクエリを使用して、文脈を保ったまま特定の情報を素早く効率的に、そして避けられるヒューマンエラーを排除して取得することができます。また、見落としがちな要素間の依存関係を追跡することも可能です。さらに、効率的なデータ分析とレポート作成、そしてインタラクティブなダッシュボードおよび静的な文書(外部レポート)の生成を実現します。

データ中心アプローチのメリット

データ中心のアプローチは、製品ライフサイクル管理活動の以下の領域を改善します。

1. データ検索と分析の効率性

データ中心のプラットフォームにより、チームはデータの検索と分析をより迅速に行えます。チームメンバーはクエリを使用して大規模な構造化データセットから特定の情報を素早く抽出でき、時間を節約し効率を向上させます。

全てのデータは一元的な場所からアクセス可能で、全データにわたってトレース可能なため、分断された文書よりもはるかに正確で最新の状態を保てます。データの変更は統合されたアプリケーション全体に自動的に反映され、冗長性とエラーが軽減されます。

2. 意思決定の改善

データ中心のプラットフォームによりリアルタイムのデータ処理と分析が可能になり、企業は最新の情報に基づいて適切な意思決定を行えます。個別の文書を解析する代わりに、チームはデータ中心のプラットフォームを分析ツールやビジネスインテリジェンスプラットフォームと容易に統合できます。

3. スケーラビリティと柔軟性

データ中心のアプローチは、将来のビジネス成長のための堅固な基盤を提供します。データ中心のプラットフォームは大量のデータを処理するように設計されており、データ量が増加しても効率的にスケールできます。これらのプラットフォームの一部はオンプレミスまたはクラウドで同じ機能を提供し、スケーラビリティをさらに高め、所有コストを低減します。オープンAPIにより異なるアプリケーションやプラットフォーム間でのデータ再利用が容易になり、組織の成長にとってすべてのデータがより有用になります。

4. コンプライアンスとセキュリティ

組織全体に散在する複数の孤立した文書よりも、一元化されたプラットフォームの方がはるかにセキュリティを確保しやすくなります。データ中心のプラットフォームの周りに堅固なセキュリティ対策を実装し、機密データを不正アクセスや侵害から保護できます。

5. イノベーションと競争優位性

データ中心のアプローチを使用することで、組織はイノベーションに向けた準備が整います。オープンAPIを備えたデータ中心のアプローチは、トレーニングと最適化に構造化データを必要とする人工知能や機械学習などの先端技術の統合をサポートします。

データ中心のプラットフォームを活用する企業は、全ての製品情報への一元的なアクセスにより、業務を最適化し、顧客体験を向上させ、新しい市場機会を特定できるため、競争優位性を獲得します。

6. 堅固で柔軟なデジタルスレッド

データ中心のアプローチは、効果的で一元管理されたデジタルスレッドのモデリングと管理に不可欠です。これは、さまざまな構造化データモデルとその要素間の関係がデジタルスレッドで定義され管理されるためです。さらに、デジタルスレッドは関係のライフサイクル管理を可能にし、これはトレーサビリティの文脈を定義する上で重要です。

文書管理システムの導入事例:日産自動車

日産自動車は、データ中心のアプローチが実世界でどのように機能するかを示す優れた事例です。日産が電気自動車の製造を開始した際、多数の複雑な車載ソフトウェアバリアントに対応する必要がありました。チームは様々なシステム間でデータを手作業でコピー&ペーストし、重要な情報を失っていました。この手作業はエラーと不整合を引き起こしていました。

これらの課題を克服するため、日産は製品ライフサイクル全体を通じてソフトウェア機能とともにデジタル資産を追跡する単一の文書管理システムを採用しました。この一元化されたデータ中心のプラットフォームにより、日産のチームは製品のソフトウェア駆動機能における単一の変更が、電気自動車ファミリー全体のソフトウェアバリアントにどのように影響するかを迅速に特定できます。一元管理されたデジタルスレッドにより、異なるデータリポジトリ間でのコピー&ペーストの必要性が排除され、エラーと時間の無駄を最小限に抑えることができます。全体として、この製品データ管理に対する新しいアプローチにより、日産のチームは複雑なソフトウェアバリアントを容易に管理・再利用でき、将来の成長と成功に向けて企業の準備を整えることができます。

文書管理システムの導入ソリューション「Aras Innovator」

当社のカスタマイズ可能なクラウドベースのPLMプラットフォーム「Aras Innovator®」は、構造化データを使用して拡張性と柔軟性のあるデジタルスレッドを構築するための実績のあるアーキテクチャを備えています。このプラットフォームには、独立した外部ツール、静的文書、その他のデータ管理ソリューションからのデータを構造化データとしてモデリング、入力、同期するためのオープンAPIとソリューションが含まれています。私たちは以下の機能でデータ中心かつデジタルスレッド管理のアプローチをサポートしています。

 

* すべてのPLMサービスを中央のデジタルバックボーンに接続するオープンAPIを備えた拡張可能なデータモデル

* PLM環境向けの新しいアプリケーションのアジャイル開発を可能にするローコード開発とDevOps機能

* 製品と資産の変更をリアルタイムで管理する高度なデジタルツイン機能

* コンプライアンスの証明と監査証跡の作成のための一元化されたデータ管理

オンデマンドプレゼンテーション「製品データの自由度を高める」を視聴して、データ中心のアプローチの実際の動作をご覧ください。