こんにちは、アラスジャパンの田村です。

PLM やものづくりの周辺で、「デジタルツイン」はもちろんのこと、「デジタルスレッド」という言葉もだんだんと目にする機会が増えてきたように思います。

デジタルツインは、ミシガン大学の教授が 3D の研究の中で使われ始めた概念であると言われているのに対し、デジタルスレッドは米国国防省の調達品におけるトレーサビリティを確立するようにというお達しから使われ始めたようです。Aras では、2012年頃から少しずつこの言葉を使い始めましたが、当時はまだ、くだんの国防省のドキュメントや、一部の IT 企業で使用されている程度でした。

製品がインターネットにつながり、製造過程も自動化が進み、さらに製造業が「物売り」から「コト売り」にシフトする中で、「デジタルスレッド」の重要性はますます高まりつつあります。

今日は、そのデジタルスレッドの定義、デジタルスレッドとは何か、そしてデジタルツインとのかかわりについて改めて考えてみたいと思います。

デジタルスレッドとは

デジタルスレッドとは、製品に関する情報を互いに関連づけることにより、製品ライフサイクルの中をいつでも遡り、製品開発の要件定義をはじめ、システム設計、意思決定の意図や経緯、製品構成(設計、製造、サービス、等)、出荷・運用中の製品の状態、等々のデータ、その他、その製品を構成するすべての情報へのアクセスを可能にすることを意味します。関連づける情報は製品情報だけでなく、承認履歴や活動フロー、作業タスクなどのプロセスデータも含まれます。これにより、製品ライフサイクルに関わる組織やプロセスの「壁」を超えて情報が流通し、正しい判断や迅速な対応、品質向上や時間(コスト)削減につながります。

デジタルツインとは

デジタルツインとは、現実世界の製品をデジタルで表現した“双子”を意味します。デジタルの“双子”には製品または設備としての機能を表現するための必要な情報が含まれていることが求められ、従来の3次元のデジタルデータと区別し、製品/設備に関する機能の振る舞いをデジタルの中で再現するために必要なメカニカル情報、電気/電子情報及びソフトウエアの情報が含まれます。デジタルツインにより、製品上に将来発生する事象をデジタルの世界で予測し、新しい付加価値を生み出すことが可能になります。

デジタルスレッドあってこそのデジタルツイン

デジタルツインは、実際の製品がその場にない場合にも、グラフィカルに表現できるという利点はありますが、製品の将来予測および付加価値の模索は、デジタルツイン単体で行うことは難しく、デジタルスレッドとの組み合わせが重要です。例えば、納品済み製品の稼働状況から摩耗度を予測し、類似製品や同一ロットの製品、設計プロセスやパーツの似た製品などを追跡し予防的メンテナンスを実施したり、製品の企画・設計の背景となった顧客の要求事項と実際の製品利用結果を照合・分析し、次世代の製品開発に活用することなどを可能にします。

デジタルスレッドを実現するテクノロジー

デジタルスレッドを可能にするのは、オープンで柔軟なプラットフォーム上に構築した、製品ライフサイクル管理のプロセス、情報およびデータです。
既存システムや外部プロセスもプラットフォームを介してつなげることができます。

各業務プロセスにおけるデジタルスレッドにより実現すること(デジタルスレッドのメリット)

企画

  • 運用性、品質、製造性、顧客要求を元にした製品要件の定義

システム設計

  • メカ・エレキ・ソフトを一体とした開発で、開発期間の短縮や手戻りの削減

エンジニアリング、設計変更

  • 製造性、組立性、保守性、等々を考慮した設計
  • 製品要件や保守時点での情報を元にした設計変更
  • 製品要件や設計意図を条件にシミュレーションのスタディを構築し、解析結果もすべて関連性が維持される
  • 明確な情報やデータを元にした意思決定

生産・製造

  • 設計時に製造を考慮し、高い生産効率、スクラップ削減、生産ライン停止の防止

品質保証

  • 品質は、その元となる製造プロセスや検査工程と密接に関連する → 品質管理のデジタル化(QMS)、APQP(先行製品品質計画)の実現
  • 上流(要件、設計意図、等)から下流(品質、サプライヤ、等)までのあらゆる関連情報から判断し、CAPA(是正措置・予防措置)を実現

保守

  • 個々の固有製品に特化した確実なメンテナンス → MTTR(平均復旧時間)の短縮

運用

  • 設計上の運用状況との比較による評価の結果、故障の予知保全が可能 → MTBF(平均故障間隔)の短縮

協調、コラボレーション

  • 社外のサプライヤや製造パートナーとの仕様書ややりとりがトラッキングされ、責任所在が明確、問題対処が迅速

デジタルスレッド、デジタルツインのための Aras のソリューション

Aras では、デジタルスレッドおよびデジタルツイン構築のための機能をご用意しています。

デジタルツイン コア


デジタルツイン コアでは、設計時点の製品のパーツやBOM、構成などから、納品後、稼働後の製品のフィジカルパーツ、サービスBOM、構成などを作成します。これにより、設計から製造、稼働後に至るまでの各フェーズの製品のスナップショットを取得しデジタルツインを構築するだけでなく、稼働中もメンテナンスや改変のデータを常に記録していくことで、デジタルスレッドを維持・強化し、データを追跡、管理できるようになります。

ダイナミック プロダクト ナビゲーション

参考リンク:「ダイナミックプロダクトナビゲーション」

設計から製造、納品後、稼働後に至るまでを含めた、製品の3Dビューを表示します。細部のパーツのデータまでブレイクダウンして3Dビューで表示したり、プロブレムレポートやサービス情報を紐づけて管理することができます。

グラフナビゲーション

参考リンク:グラフナビゲーション

グラフナビゲーションは、製品のデータ構造、つながりをノードで表示し、簡便に可視化することができます。Aras Innovator 全体の共通プラットフォーム機能として、様々なアプリケーションのデータを紐づけ、各データにドリルダウンすることが可能です。

これらの機能を活用することで、正確かつ詳細な情報に基づいた、あらゆる時点での製品のビューと分析、将来への効果的なデータの活用を実現します。

おわりに

Aras は、Aras Innovator の柔軟でレジリエントなプラットフォームをお客様に提供し、デジタルツインおよびデジタルスレッドの構築を支援します。

Aras でのデジタルスレッド構築手法についてはぜひお問合せください。

マーケティング 田村